先生がどんとん近づいてくる。



これは、ほんっとーに大変!



「武藤くんっ」



軽く揺するけど起きる気配がない。



困った…でも助けたいよ。



よしっ…こうなったら。



あたしは手で口を覆い俯いた。



「ゴホッゴホッ…ちょっと風邪ぎみで。腹も痛くて…」



とびきり低い声を出し、武藤くんの代役を。



「なんだって?よく聞こえないな、とにかく顔を上げろ」



「かなり体調が悪くて…それでも先生の授業は聞きたいんです…」



「そうか…熱心だな」



先生は足を止め、テキストを持ち直す。




あと一息!



「すみません…今朝食べたバナナで食あたりを…あっ、ちょっと腐ってたかも。息がとてつもなく臭いんで…こうして伏せてるんです」



先生がしかめっ面をするのと同時に、クラスに笑いが起こった。



あっ…あれ。



ちょっとやりすぎた?