「うわっ、田中…」



あたしの悪口を言っていた男の子が気まずそうにしている。



昨日の男の子が武藤くんだって確証はないけど…そうなのかもって思えてきた。



だからこそ、涙が止まらない。



武藤くんは…眉をひそめてあたしを見ている。



突然こんな風に現れて、いきなり泣いてるとかないよね。



自分がどうしてここにいるのかも、わからなくなってきた。



くるりと反対を向き、来た道を歩き始めると…。



「待てよ」



武藤くんの声が聞こえた。



どっ、どうしよう。



こんな風に泣いて、合わす顔がないよ。



これは…もう、ダッシュで逃げるしかない!



振り返ることもせず、あたしは一気に橋の向こうまで走り抜けた。