武藤くんが彼氏でよかった。


好きになって本当によかった…。


手を伸ばして抱きつこうとすると、見事にスルーされた。


スカッと手が空を切る。


「そうはいくか」


「この流れだと、抱きしめるよね?」


「どこの世界の話だよ。はー、休み時間終わるじゃん。昼寝しそびれた」



頭をかきつつ席に戻ってしまった。



まあ、武藤くんらしいよね。



本当は照れてるのかな?



そうだとしたら嬉しいな。



席に戻って、残りの休み時間に昼寝をしている武藤くんの横顔を見つめる。



付き合ったからって、甘~い日常がやって来たわけじゃない。


それでもこうして側にいられるだけで、すっごく幸せ。


「武藤くん、大好き」


顔を覗き込んでそっと囁くと、反対側を向いてしまった。


だけど耳が赤いって、あたしはちゃんと気付いてるよ。


end