大人の階段を駆けあがる




「あのね、三宅さんを探してるの」

「いや、三宅さんって誰?」

「そういう名前の三毛猫だよ。来週までに提出しなきゃいけないスケッチがあるから週末を使って描く予定だったんだけど三宅さんが逃げちゃって……」


どうやらお姉ちゃんは土曜日だと言うのに学校に行って部活動をしてたらしい。いつも敷地内をうろうろしている猫を追いかけてここまで追いかけてきたようだ。


三毛猫だから三宅さん?

誰だ、そんな絶妙なネーミングセンスを持った人は。


絶対にお姉ちゃんではない。お姉ちゃんはそういうセンスもないから絶対安易にタマとか名前を付けてしまう人だから。


「見つかった?」

道の向こうから走ってきたのは、お姉ちゃんと同じ学校の男の人。

色つきのパーカーにハイカットのスニーカー。たぶん、猫に三宅さんと名付けたのはこの人だろう。


「あれ、すずめだ。こんにちは」

「どうも」


人懐っこい笑顔を見せるこの人は、お姉ちゃんの彼氏だ。

一応、私も顔面偏差値を見極める能力は高いほうだけど、今まで出逢った男たちとは比にならないぐらいイケメンで、初めて見た時はフリーズしかけたくらい。