「あの、とは？ご存知ないですか？
　世界的にも有名なオモチャメーカーのナツカワ社です。」

「そ、そう。
　そうだとしても今までバリバリ仕事をしてきた女が新入社員みたいな若僧。」

「年齢や経験は関係ないかと。」

　蒼葉くんは花村さんを見据えたまま私の手を取り指を絡めた。
　思わず顔が熱くなる。

　花村さんが手から私の表情まで目で追ったのが分かった。

「それにしても仕事の打ち合わせ場所に恋人を迎えに来させるなんて非常識なんじゃないのかい？」

「それは……すみませんでした。
　時間外の打ち合わせでしたので、打ち合わせが終わり次第プライベートな時間だと。
　以後、気をつけます。」

　自分だって仕事だと偽って呼び出したくせに。
　それに仕事と言いながら私を下の名前で呼ぶのもマナー違反だわ。

「あぁ。気をつけてくれ。」

　花村さんは尊大な態度で言ってから、そそくさと去って行った。
　その姿が滑稽で思わず笑ってしまった。