「美希さん。待った?」

「蒼葉くん?」

 颯爽と現れた蒼葉くんに目を丸くする。

 蒼葉くんはごく自然にスーツを着ていた。
 背が高く細身の体にフィットしたスーツはスマートな身のこなしがますます映えて見惚れてしまう。

 私の隣へ歩み寄った蒼葉くんが彼に向かって静かに宣言した。

「美希さんは俺と真面目なお付き合いをしています。
 今日はここへ迎えに来るように頼まれたので迎えに来ました。
 失礼して帰らせて頂きます。」

 私を連れて帰ろうとする蒼葉くんに半笑いした彼が質問を投げた。

「そうなの?
 君が美希の新しい恋人?
 若そうだけど君、いくつ?」

 冷めた目を向けて蒼葉くんは答えた。

「今年入社の新入社員です。
 ナツカワに勤めています。」

 すごい大見得切ったな……。
 けれど不安を微塵も感じさせない。

「ナツカワってあのナツカワかい?」