花村さんとの打ち合わせが終わってレストランを出た。
 打ち合わせなんて名ばかりで、ずっと別の話だったのには分かっていたけどうんざりする。

「考え直してくれよ。
 本当に愛しているのは美希なんだ。」

 歯の浮くような台詞に揺れる瞳。
 心が揺らいで落ちしまう。

 …………前の私なら。

 それが全て演技だってことが分かる。

 真っ直ぐな若者の目に見慣れるとダメね。
 目が濁って見えるわ。

 それに……霞んで見える。

 男前な人だと思っていたのに雰囲気イケメンだったのね。
 残念だわ。

 私は全てを飲み込んで口を開いた。

「私………。」