「なんだ。女でも出来たか。
　さっきのメールのか？」

　海斗は変なところで勘がいいから参る。

　ただの女じゃないだろって言わなくても聞こえるような顔をした海斗は口の端を上げた。

「先に手を出して失敗した。
　だから慎重に行きたいんだよ。」

　帰りたくないからって寝たふりまでして。

「手を出して……ね。
　蒼葉が見境なくって珍しっ。」

「見境なくってわけじゃねーよ。」

「ふーん。本気ってわけね。」

　クククッと笑う海斗が鬱陶しくて机に突っ伏した。

　寝たふりをした俺の顔を覗き込む美希さんがキスくらいしてくれるかなって淡い期待は脆くも崩れて。

　勝手に添い寝する勇気も、そんなことして何もしないでいられる自信もなくて。

　朝まで眠れない体を持て余していた。

「馬鹿だ。俺。」

　ため息を吐いて目を閉じた。
　眠れなかった体はいとも簡単に夢の世界へと堕ちていった。