そんな会話をした数分後、彼は水を滴らせながらタオル一枚で戻ってきた。

「ちょ、パジャマとか持って行かなかったわけ?」

「良かった……。」

 しゃがみこんだ彼の髪から雫が落ちる。

「帰っちゃったんじゃないかって気が気じゃなくて。」

「ふふっ。変な心配。
 ゆっくり湯船にも入ってこればいいのに。」

「だって、昨日帰られたから!!
 ……はぁ。俺、ダッセー。」

 うなだれる蒼葉くんにますます笑う。

「チェスのルール読むのに忙しくて帰るのは思いつかなかったな。」

 意地悪なことを言うと「美希さん!」と不平を訴えるように顔を上げた。