可愛いと思うのに真っ直ぐ見つめる瞳と目が合って思わず目を伏せた。
 歩み寄って来た彼は意欲的だった。
 
「何からやります?
 やっぱりグリップかな。」

 気にし過ぎたみたいだ。
 蒼葉くんは至って普通で、敬語で、今朝の惨事がなかったみたいだ。

「今ごろ気づいたんだけど、蒼葉くんは誰かと練習してたでしょ?
 その子達はいいの?」

 一瞬、目を丸くした蒼葉くんはラケットを手の中でクルクルと持ちかえながら笑った。

「友達とは美希さんが来るちょっと前まで一緒に練習してました。
 昨日も友達とやった後に俺一人で残って練習してたんです。」

 そっか。それならいいのかな。
 コーチになってくれるというお言葉に甘えて。

 付き合う云々は……聞かなければこのまま無かったことになりそうな気もする。

 そんなことを呑気に考えていた私の手がつかまれた。

「え?何?」

 つかまれた手から熱を帯びて顔が赤くなっていくのが分かる。

 何この反応!中学生じゃないんだから!!

 そう思うのに勝手に顔が赤くなるのは止められない。