「俺は名前を何度も間違えられてヤケになって美希さんにかなり酒を勧めた。」

「飲ませるの上手よね。
 飲み過ぎちゃったって自覚もなかったもの。」

 私は感心して言ったのに蒼はうなだれた。

「それはごめん。
 ちょっと卑怯だったかなって思う。
 酔っていく美希さんが可愛くて……。」

 反省の色を浮かべる蒼に微笑んで本心を口にする。

「蒼の隣は居心地が良かったから。」

「……ありがとう。
 そのままその時も言ってくれた。」

「え……そうなの?」

「うん。
 居心地がよくてつい甘えちゃうって。
 誰にも甘えられないのに不思議だって。」

 そんなこと言ったんだ。
 誰にも甘えられないのに蒼には甘えられるって言ったこと散々からかわれたけど、そんな流れで言ったなんて。

 その時から蒼への気持ちが……自分でも気づいていなかった好意が漏れ出ていたみたいで恥ずかしい。

「あと重要な忘れてることはなんだと思う?」

 意地悪な顔を向けられて首を横に振った。

 重要って……。

「……ごめん。本当に覚えてないの。」

「じゃ行こうか。」