「慰めてるの?」

「ううん。甘やかしたい。」

「甘えられないわ。蒼葉くんになんて。」

「惜しいな。違うよ。
 そこで別の名前を呼ばれた。
 太郎だとか次郎だとか。
 名前は忘れちゃったけど。」

 あぁ。私の悪い癖だ。
 覚えられないから思いつく名前を適当に言う。
 たぶん蒼葉っぽい、若い子風な名前を口にしたと思うんだけどな。

 だとしても。

「……私ってすごく失礼だった?」

「何を今更。」

 冷めた目を向けられて小さく「ごめん」と呟いた。

「フッ。
 あの時の美希さんに聞かせてあげたいよ。
 名前を覚えられないくらいに俺のこと興味なかったのに今じゃ……って。」

 その通りだ。
 今はあの頃には考えられないくらい蒼のこと……。

「もう。それは言わないで。
 こんな再現やめたらいいのに。」

「いいから。続けて。」

 考え直すことはなかった蒼に従うしかなかった。