居酒屋で……というよりもお酒を飲む機会が減って、何より飲みたい気持ち自体にならないこの頃。
 だから飲み屋街に来るのは久しぶりだ。

 周りのお店は違うテナントが入る店舗もありつつも、私達が入った居酒屋はあの日のままそこにあった。

 どこに座ったのかまで覚えてそうな蒼だったけれど、さすがに席の指定はしなかった。
 似たような席に通されて向かい合って座る。

 軽く注文を済ませると、さっそく始めるみたいだ。
 もちろん今日は私もお酒は注文しない。
 酔ってしまったら元も子もない。

「美希さんは元彼に振られた話をして目に涙を浮かべてた。
 で、俺が頭を撫でたら慰めてるの?って。」

 本当にやるんだ……。
 苦笑しながらも台詞を口にする。