「じゃもう1つ……もう2つかな。
 プレゼントもらっていい?」

 その微笑みにいたずらっぽい色が加わった気がして、また何か企んでいることが分かった。

「何?怖いわ。」

 目を伏せた蒼がふざけたことを言い出すのかと思ったら、想像以上のことを口にした。

「あの、過ちの日の再現をしたい。
 美希さんは忘れてて俺だけ覚えてるのがなんだか悔しいんだ。」

 未だに蒼の心にわだかまりとして残っているのが伝わって胸が痛い。

「それは……ごめん。
 でも、全部忘れてるわけじゃ……。」

「そうみたいだね。
 だって体は覚えてたみたいだし。」

「……馬鹿!」

「じゃ居酒屋さんに行こうか。」

「えっ。そこから?」

「うん。台詞もだいたい覚えてるから同じこと言わなきゃダメだよ?
 台本作ろうか?」

「お願いだから作らないで!!」

 これが誕生日プレゼントになるのか甚だ疑問だけど……。
 忘れていることに罪悪感を覚えて蒼の言う通りにすることにした。