数日経つと、小さなガラスの小瓶に挿しておいたタンポポはいつしか綿毛になって今にも飛んでいきそうだった。

 それを見つめて2人で微笑んだ。

「テニスコートの近くにある広場に持って行こう。」

 何度も通ったテニスコートまでの道。
 手を繋いで、風で綿毛が飛ばされないように慎重に運ぶ。

 広場につくと「いい?」と蒼に聞いてから息を吹きかけた。

 吹かれた綿毛は吹きかけた息になびいてからふわっと茎から離れて、そのままそよそよそと漂いながら飛んで行く。

「行っちゃったね。」

「うん。」

 なんとなく寂しい気持ちでいると蒼は晴れやかな顔をしていた。

「綿毛になっても一緒にいられたね。」

「ん?そうね。」

 そっか。そんな風にも思えるのかな。

「俺達も………。
 いや……うん。
 ほら、茎も土に還してあげよう。」

 微笑んだ蒼に促されて広場に生えているタンポポの近くに茎を置いた。

 たくさんのタンポポが咲く広場は子どもの頃を思い出すような懐かしい気持ちになった。