「ゲーム、セット アンド マッチ 高坂。
 2セット トゥ 0
 40-0、40-0」

 ラケットを手の中でクルクルと回しながらネットに歩み寄った蒼がやっといつもの笑顔で微笑んだ。

「よく頑張ったね。」

「嫌味でしょ?それ。
 ストレート負けじゃない。」

「まぁ。
 コーチが得点取られたらダメでしょう?
 でも、何度か打ち返すから驚きました。」

 ここで敬語……。もう。

「嘘つき。」

「本当だってば。
 で?卒業試験と付き合い続行かどうかの試験はどうなったの?
 合格?それとも………。」

「それは………。」

 どうするのかなんて考えてなかった。
 ただ、自分の気持ちが収まらなかっただけで……。

「俺は…真剣な試合より美希さんとラリーしたいな。」

「ラリーかぁ。」

 ラリーも楽しいよ?
 だけど、私は蒼に一矢報いたかったの!

「美希さんとなら気を遣って手加減しなくてもラリー出来そうじゃない?
 俺にとっては貴重な相手になりそうで嬉しいんだけど。
 ほら。下手な奴とやってもつまんないし。」

 どこまで本心なんだか……。
 敬語じゃないから本心なのかな。