テニスサークルで声をかけられた中原さんのお姉さん……であろう美希さんはどストライクの美人だった。

 サーブの構えをした時の凛とした姿は何者も寄せ付けない気高さがあった。
 長い髪をひとまとめにし、どこにも隙を感じさせない。

 きっと黙っているとキツそうに見られるタイプだと思うけどそれがまたがいい。
 誰にでも愛想を振りまく奴は苦手だ。

 それにキツそうに見えるのに笑うと一気に可愛らしい印象に変わる。
 そのギャップにやられるし、何よりその笑顔を独り占めしたくなる。

 しかしどうやら相手は俺と温度差があるらしい。
 ことごとく俺のアプローチは空振りに終わる。

「焼けちゃいましたね。」

「ん?」

 だいぶ出来上がって来た美希さんの腕を指差して指摘する。

「あ〜ぁ。日焼け止め塗ったのになぁ。」

 落胆した声を上げる美希さんは焼けてほんのり赤くなった腕を頬にすり寄せた。
 ずいぶん酔っているみたいだ。

 酔うと可愛い仕草が増えるって、どんだけ………。