得体の知れない男の登場に嫌な予感がして美希さんをその男から守るように間に立った。
　その男は挑戦的な顔で俺に質問を投げた。

「ナツカワでこの夏、重大ニュースがあるのを君は知っていますか？」

「………さぁ。」

　機密事項を知っていたとしても話してはいけないからこその機密だ。

「今、開発中のオモチャが世界のバックスと限定コラボして売り出す予定です。」

「バックスってあのバックスですか？」

　驚いた近くの人が質問を向けた。
　その質問に笑って頷いてみせた男に奥歯をギリリと噛み締めた。

　どうしてそれを知っているのか。
　それは開発事業部、最大の機密事項だ。
　それを僕まで肯定するわけにはいかない。

「俺はそのことは知らないです。
　機密事項は関係しているごく一部の人しか知らされないので。」

　そう。ごく一部の人だ。
　けれど開発事業部にこんな奴いない……。