「硬式、やっちゃいけない?」

 また可愛くない返事を……。

 彼も少し困ったように笑った。

「いけなくはないけど………。
 軟式のソフトボールをやる人と硬式の野球をやる人がいるように、無理に硬式テニスをやることないんじゃって思ったんです。」

 野球を引き合いに出すのが上手だわ。
 決して馬鹿にしてない感じがして。

 話し方にもどこか品があるのよね。
 それに、賢そう……に決まってるよね。
 有名大学サマサマだもの。

「会社の球技大会があってテニスの経験あるって言っちゃったのよ。」

「経験って球技大会は硬式テニスで経験はソフトテニスだったってオチ?」

「失礼しま〜す。
 刺身の盛り合わせです。」

 店員さんが料理を運んできて話は中断された。

 テーブルに置かれたのは鯛にマグロにサーモンの3種盛り。

 刺身はツマや大葉、菊の花と共にお皿に並べられている。
 その下の氷がもう一枚のお皿に玉砂利のように敷かれて涼しげだ。

 何より新鮮そうな刺身が食欲をそそる。