「………変じゃない?」

 目を見開いて言葉を詰まらせた蒼に不安になって「やっぱり変かな?」と下を向いた。

「ううん。
 思った以上に似合ってて……驚いて。
 すごく綺麗です。」

 その敬語はどっちの?
 ちゃんと褒めなきゃって義務感で?

 頭をかいた蒼がおもむろに立ち上がると「ちょっと待ってて」と私の体の向きを変えさせた。

 壁しか見えない私の後ろで蒼は何やら着替えているみたいだ。

「……行こうか。」

 そう口にした蒼は私の手を引いて歩き出す。

 やっぱり着替えたみたいでさっきのラフな格好から一転、濃いブラウンのスキニーに上は黒で薄手の七分袖のジャケットを羽織っていた。
 僅かに見えたジャケットの中は薄いグレーのVのシャツ。

 ズルイよ。
 急にかっこいい格好しちゃって。

 スーツの蒼とも、ラフな格好とも違う。
 デートの為の服装という感じが私の胸を無駄にときめかせた。