服を選びながら心は浮かれていた。
 帰ったら美希さんが待っている。
 そう思うだけで嬉しかった。

 アパートに一旦帰らせるなんてしたくなかった。
 少しでも自分のところに閉じ込めておきたいっていう変な独占欲なのか……とにかく帰したくなかった。

 服を買って帰れば俺が選んだ服を着た美希さんとデート出来る。
 今日1日は恋人らしいことをたくさんして甘い時間を過ごすんだ。

 再び携帯が鳴って浮き足立つ俺の気持ちの邪魔をする。

「蒼葉くん何度も悪いわね。
 やっぱり双葉は蒼葉くんに会いに行ったみたいなの。」

「………そうですか。
 今日は出掛ける予定があるので会えるといいのですが。」

「もう双葉ったらごめんなさいね。
 迷子にはならないと思うわ。
 会えたら叱ってやって。」

「はい。分かりました。」

 双葉は年の近いいとこで俺のことを小さな頃から慕ってた。
 その双葉が家出となれば心配は心配だ。

 だからって今日に限って……俺と美希さんを邪魔するようなことをしたら例え双葉であろうと勘弁して欲しい。

『蒼兄ちゃん』と呼びながら俺の後をついてくる小さな頃の双葉を思い出して、まぁ仕方ないか……と一応は捜すように心掛けた。