「ダーメ。俺は美希さんとデートするの。」

 彼の言葉にいちいち一喜一憂する自分に苦笑する。

 本当は何よりも誰よりも最優先して欲しいってワガママな思いが首をもたげてはいた。
 けれどそんなこと言えるわけなくて、彼はそんな私の思いを知ってか知らずか、謝りの言葉を口にした。

「でも……その前にごめん。
 いとこが家出したらしくて、勝手にこっちに来てないかって。
 さっきの電話、叔母さんだったんだ。」

「それは大変じゃない。捜すの?」

「闇雲に捜しても……。
 だから美希さんの服を買うついでにその辺は捜そうと思う。
 だから待っててくれない?」

「服を買うって……大丈夫よ。
 昨日の服を着て帰って何か着替えてくるし………。」

 真剣な眼差しを向けられて口を噤んだ。

「今日はデートです。
 本物の恋人と思って俺に甘えてください。」

 どういう理屈か分からないけど……。

「………そう。じゃお願いします?」

「はい。俺、行ってくるんで、待っててもらえますか?」

「はい。」

 なんだか変な会話だ。