電話が不意に鳴って相手を確認した蒼が「ごめん。出ていい?」と断ってから電話に出た。

 何を話しているのか、相手がひどく焦っていることは伝わって来た。

「大丈夫です。分かりました。
 こっちでも探してみます。」

 電話を切った蒼はため息を吐いた。

「大丈夫?私、帰った方がいい?」

 ハハッと軽く笑った蒼が「帰らないで」と呟くように言った。

「その格好でどうやって帰るの?」

 蒼のTシャツに下は男モノのボクサーパンツ。
 こんな姿で帰るわけない。

「下着は昨日洗って浴室乾燥で乾かさせてもらってる。
 服はまだ洗ってないからそのまま着れば帰れるわ。」

 せっかくのデート。蒼とのデート。
 楽しみだったけど仕方ないと思う。