「えぇ!ピアノ奏者も代役2人も全て来られないの!?」

 代役と蒼葉くんに言われて念のため全部で3人もの人を確保したのに全滅って……。

「どうするんですか?
 リハやって本番まで新しい人を探す時間なんてありませんよ?
 だいたい駆けずり回ってやっと見つけた3人だったのに。」

 スタッフと青い顔をしていても解決にならない。
 イベントの内容をガラリと変えるべき?
 主催者の人になんて言ったら………。

「弾く予定の演奏曲を見せて。」

「蒼葉くん……。」

 スーツ姿の蒼葉くんがいつの日かの登場を彷彿とさせる身のこなしで颯爽と現れた。

 そういえばどこでイベントをやるのか聞かれたから場所の話もしたんだっけ。

 でも……どうして……。

 私に近づいてきた蒼葉くんが「俺のこと蒼って呼べるなら助けてあげる」と耳打ちをして、いたずらっぽい笑みを浮かべた。

 助けて欲しいに決まってるけど……誰か知り合いにピアニストがいるとか?
 底知れない何かを持っていそうな彼に「蒼……お願い助けて」と懇願していた。

「これはヒーローのおでましだね」と彼は笑う。
 けれどその笑顔をまだ頼もしいとまでは思えなかった。
 だって今回はさすがに………。