次のイベントの準備に忙しくてテニスの練習もままならない。
 ちょうど季節も梅雨で雨続きだから室内で練習が出来るところを探さなきゃねと話していたところだった。

「ごめん。コーチ頼んでおいて。」

「ううん。美希さんは大変そうだね。」

「うん。次のイベントの演出にピアノを使いたいんだけどピアノの奏者がなかなか捕まらなくて。」

「そう……。」

 すっかり私の前で敬語が抜けた蒼葉くんがチュッとリップ音を立ててキスをした。

 本人には確認してないけど……。
 蒼葉くんはやっぱりハーフなんだと思う。
 こういうことを恥ずかしげもなく普通にやってのけるから。

 キスしてきた彼は涼しい顔で私の仕事にアドバイスをくれた。

「音楽家って案外気まぐれだから代役を決めておいた方がいいよ。」

 代役か……確かにね。
 今回のイベントでピアノの演奏は重要な役どころだ。
 穴を開けないようにしなきゃ。