その日は、タクシーで家の前まで送ってもらった。
 


三十歳を過ぎた大人が、キスをしただけでドキドキして、満足している姿を周りから見ると、中学生並みの恋愛と笑われるかもしれないが、恋愛をしている二人にとっては、それだけでも十分幸せだった。
 


もしかしたら、お互い三十歳を過ぎていたから、慎重に恋愛をしていたのかもしれない。



私の中で、結婚という二文字が少しずつ浮かんでき始めていた。



しかし、彼にはまったくその気がないことはこの時は思いもよらなかった。