「……偶然。元気か?」
徐ろに声をかけてきた相手は、中学時代に片思いをしていた男子だ。
名前は原田 勇希(はらだ ゆうき)と言って、私がラブレターを書いた相手。そして、それを部活中に読んだ人……。
「…………」
私は直ぐに返事が出来なかった。
声を出すのも億劫で、どうしてこんな日に会いたくもない人達ばかりと会うのか…と呪った。
「良かった。俺、いつかあんこに会いたいなと思ってたんだ」
原田はそう言うとキョロキョロと周囲を見回した。
それから、あっちへ行こう…と指差し、私の様子を窺う。
(誰が!)
胸の中で思ったけど、歩き出す原田の背中を追った。
一言でいいからこの人に文句を言ってやろうと思い、影を踏みながら前に進んだ。
こいつが私のトラウマを作った張本人だと思う気持ちが胸の中にあって、それを彼にぶちまけたい心境だった。
何がそうさせるのかも分かっていた。
私は自分が消極的な所為で、坂巻さんを楽しくさせれないからイラついてたんだ。
勿論、原田の所為なんかじゃない。
全部、自分の責任だと思ってる。