静かな住宅街に救急車のサイレンが鳴り響く。近所の人達はもう大騒ぎ。
栞奈は救急車に乗せられ、栞奈の母である愛奈(あいな)は泣きながら乗った。
「栞奈……!」
手術室の前で愛奈は栞奈の手術が終わるのを待っていると、栞奈の担任である山本翔太(やまもとしょうた)先生が息を切らしながらも来てくれた。
「栞奈さんがあんなことをするなんて思っていませんでした……」
「先生……」
翔太は子供みたいに声をあげながら泣いていた。愛奈も隣で頬を濡らす。
「俺がもっとあの子の隣で支えてやってれば……栞奈はこんな……」
翔太も教師としてではなく、人間として彼女のリストカットを悔やんでいる。
「先生は悪くありません……たぶん、美那ちゃんのせいです……」
美那という名前が上がって、翔太は固まった。
栞奈は一度だけ、学校を休んだ。美那に散々なことを言われて苦しんでいた。その時に翔太は彼女の家に訪問して話を伺ったことがある。
「あんなことをしたということは……遺書があるはずです」
「栞奈の手術が終わったら、探してみましょうか」
足音がバタバタを聞こえる。
「栞奈……!」
元父親である修二(しゅうじ)まで駆け付けて来て、愛奈は驚いていた。
「えっと、先生ですか?」
「はい。栞奈さんの担任の山本翔太です……」
「元父親の松山修二です。栞奈がお世話になってます」
修二と翔太は少し軽めに挨拶していると、また足音が聞こえてきた。
「栞奈ちゃんは……!」
次に来たのは、栞奈の親友である清香(さやか)だった。けっこうショックを受けている様子だった。
「えっと、この人は……?」
「元父親の松山修二。栞奈をいつもありがとう……」
「あっ、工藤清香です。栞奈ちゃんは……」
その場に居る全員が俯いた。動脈を切った為、どうなるかわからない。
清香も座り込んで、泣いてしまった。座っていた大人たちも涙を流していた。