氷を左手首に付けている少女の名は、松山栞奈(まつやまかんな)。中学二年生である。


早く早くと、彼女は生き急いでいるようだった。


『ブス女は死ね!』


私は生きてはいけない、と悩み苦しんでいたのであった。


彼女が死を決意させられたのは、みんなの悪口だった。それを言われるのが耐えられなくなり、今に至るということ。


『氷で手首を冷やして切ると痛くないんだよ』


これは、部活の後輩である真矢に教えてもらった方法だった。


「私は生きてちゃダメ……死なないと……いじめられる……」


栞奈はもう遺書を書き上げていたので、今は最後の仕上げという感じである。


包丁を持つ手が震えて、切るのが怖い。本当に死ぬと思うと嬉しいけど、恐ろしい恐怖と緊張感に襲われる。


そして、意を決して彼女は自分の左手首を切り裂いたのだった。


「これで、美那は……反省して……くれるよね……?」






彼女は意識を手放した――