翔太は教務室の自分の席で頭を悩ませていた。


栞奈を目覚めさせるには、篠原先生という人物が必要となる。だが、その人は今どこに居るのかを翔太は全くもって知らない。


「朝からお悩みのようですね。話なら聞きますよ、山本先生」


「あっ、田中先生。じゃあ、聞いてもいいですか?」


「もちろん、いいですよ」


翔太は篠原先生という人はいったい誰なのか晃平に聞こうと思った。


「篠原先生って、誰ですか?」


「えっ……」


翔太が聞くと、晃平は黙ってしまう。周りの先生も驚いた顔をしている。


「なぜ、その名前を……?」


「栞奈の病室に行ったら、栞奈が唸り声を上げながら言ってました。『篠原先生に会いたい』と」


「えっ、そんな……」


なかなか晃平は口を開いてくれない。篠原先生とはいったいどんな人物だったのか、よくわからなくなってきた。それでも翔太は問い詰めようとした。


「田中先生、教えてください。篠原先生って誰ですか?」


「何で……」


「栞奈を目覚めさせるには、その人しか居ないんです。分かったんです。あの子にとって希望の光りは篠原先生という人なんだって……!」


「じゃあ、元四組の生徒に聞いてください」


「えっ?」


「一年四組はあの人の最後の担当でした。貴方のクラスにも居ますよ。松山さんもそうだけど、他にも居ますよ。工藤さんとか赤月さんに聞いてみるといいですよ」


翔太は美那に問い詰めようと思って、立ち上がって教務室から出て行った。