「栞奈、起きて」


「栞奈、起きろ」


――誰が私を呼んでいるの?


夢の中、栞奈は暗闇を彷徨っていた。


「栞奈、ごめん。起きて……」


「美那は許さない……美那は許さない……」


「ごめん!栞奈、許して!」


「許さない……許さない……」


美那の顔を見たくないみたいで、栞奈は後ろを向いた。そこには、寂しそうな翔太がいた。


「栞奈……俺もしたんだ。俺と栞奈は同類だよ」


「えっ……」


「栞奈、目覚めて。話そうよ」


「やだ!死にたい……死にたいの!」


「栞奈!」


栞奈は夢の中で走り駆け抜けて行く。もう誰も信じられなくて、他人の無視するようになった。


「栞奈、逃げないで!」


翔太の叫び声が聞こえた。栞奈は先生も信じられなかった。


『あんな小説、つまんねぇよ。アハハ!』


『気持ち悪い、目障りだよ!』


美那の顔が現れる。声を聞きたくなくて、耳を押さえた。


『栞奈、大丈夫?』


『栞奈はここに居ていいんだよ』


翔太の声がうっすらと聞こえた。以前に栞奈が落ち込んだ時に言ってくれた言葉だった。


『栞奈が死にたかったら、お母さんも一緒に死ぬからね』


あの時の泣きながら言う愛奈の声が聞こえた。


「もう生きたくない。死にたいよ……早く消えて、楽になりたいよ……」