愛奈は病室で眠る栞奈は見つめていた。


色んな感情が混ざり合い、また愛奈は涙を流す。頬を濡らしてしまうのはこれで何回目なのだろうか。


「失礼します」


そう言って入ってきたのは、瞼を腫らした翔太だった。翔太も瞼を腫らしている愛奈に俯いてしまう。


「俺と栞奈は同類ですよ」


「えっ?」


急に言葉を発した翔太に愛奈は驚く。


「俺も栞奈みたいにリストカットをよくしました。だから気持ちは分かるんです」


翔太からの衝撃発言に愛奈は目を見開いて黙ってしまう。翔太は栞奈を愛しそうな目で眺めながら話す。


「俺もいじめられたから分かるんですよ。追い詰められて死を望んでしまうですよ。人生が、今生きているこの世界が辛く感じて、死を望んでしまう」


「先生……」


「だから栞奈の気持ちがすごく分かるんです。だから今、もっと向き合ってやれば良かったと後悔しています」


翔太は眠る栞奈の包帯が巻かれた左手を強く握り締めた。翔太の目から涙が零れ落ちた。


「栞奈、ごめんな。俺が守ってあげればこんなことにはならなかったのに。ごめん、栞奈……」


愛奈もまた涙を流した。二人は栞奈が目覚めることを願うように泣いていた。


「俺はもう行きます。さよなら」


「はい、さよなら……」


翔太は愛奈と栞奈が居る病室から出て行った。そして、自分の左手を握り締めた。


「早く目覚めてよ……栞奈……」


翔太は病院から自分の家へ帰って行った。