陽太は自分がやった罪を気にせず、お気楽に色んな人をいじっていた。


なんと、美那も陽太のターゲットにされたらしい。


「お前さ、松山みたいにブスでデブじゃん。人のこと言えねぇよ。人殺し」


陽太に言われて立ち止まる美那。美那の目元には隈が出来てしまっている。


「松山も俺と同じようなことを言われてやったんだろ?お前が辛いって思っても、アイツはもっとお前に辛いことを言われたんだからな」


美那は走ってその場を離れようとする。たくさんの人を掻き分け、目的も無いまま走り続けた。


美那は無意識に走ってる内に誰かに当たって座り込んでいたらしい。


「あれ、赤月さん?」


「山本……先生……」


美那は目の前の人を見て、肩を震わせた。翔太も驚いた顔をしている。


「なんかあったか?」


翔太は優しく美那に声を掛けた。翔太にとって、自分変える始まりなのだろう。


翔太の優しさに驚きつつ、美那は俯いた。


「陽太が……言ってきた……」


翔太はなんとなく想像出来た。陽太は美那を標的とし、栞奈のリストカットを使っていじめているということを。


「話、聞くよ……」


翔太は慣れない言葉を口にした。美那は驚いて顔を上げた。


「倉上は反省する気ゼロか……。赤月さん、栞奈も倉上と同じようなことを君に言われた。赤月さんも死にたくなるのは納得できるでしょ?」


「はい……」


翔太にそう言われて、美那は涙を流していた。男勝りな美那が人前で涙を流すのはかなり珍しいことだとか。


「俺もその気持ち分かるな……。この先は談話室で話そう」


美那は翔太の言っていたことがよく分からなかった。とんでもないことを聞かされそうな気がした。