「……ふぅん。赤羽、好きなやついるんだ?」


「へっ……?なんで?」



ジリッと私への距離を縮めた生田に、ゴクリと生唾を飲む。



「今もそいつのこと考えてたんだろ?」


「……いや、それは……」



図星すぎて返す言葉もないんだけれど。
何で分かったのさ、生田。



「……赤羽にそんな顔させる男がどんな奴か、素直に興味がある。会ってみたいかも」



背中には資料が沢山並んだ棚、目の前には妖しく笑う生田。
頭の中にはどんな時もカッコよすぎる蓮見さん。



「そ、そりゃもう!めーっちゃカッコイイ人だよ。生田と蓮見さんが会うことなんて絶対ないから!」



「へぇ、蓮見って言うんだ」



「あ、……」



しまった。ついうっかり蓮見さんの名前出しちゃったよ。なんか、生田のペースにまんまとハメられた気分。


でもま、いっか。
どうせ蓮見さんと生田が会うことなんて本当にこの先絶対に有り得ないだろうし。


有り得たところで、蓮見さんが生田を相手にするわけない。


と言うか、私だって相手にされてないのに、生田なんかが相手にされてたまるかってんだ。



「もう!ほら、早く資料持って!生田のおふざけに付き合ってるほど私は暇じゃないの」


「やっぱ全然想像つかねぇな〜。赤羽が男にのぼせてるところ」



そんなの想像せんでいいわい。
ほっといてくれ!!


蓮見さんの前での私を生田に見せたら……いや、生田だけじゃない。

多分、会社の人に見せたら絶対に驚かれる。
間違いなく笑いものだ。