───7月の風はどうしてこうも鬱陶しいんだろう。


まだ朝の8時だって言うのに、ちっとも涼しくなんかない。


ただ歩いているだけで額にじわりと汗が滲むのが自分でも分かるくらい、今年の夏もお決まりの灼熱地獄だ。

あぁ、もういっそ冷蔵庫に入れてくれ!
氷風呂につけてくれ!


そんな気持ちになるほど、私を朝から容赦なく照らす太陽は、悪びれる様子もなく空高く昇っている。


だけど、



「あっ!蓮見(はすみ)さ〜〜〜ん!!」



彼の姿が見えた瞬間、そんな暑さもぶっ飛んでしまうのだ。



こんな朝でも、迷わず猛ダッシュを繰り広げて、
もちろん、ちょっとくらい髪が乱れたって気にならない。


流れる汗も……とりあえず、今は気にしない!


ピンヒールはさすがに走りにくいけど、そんなことにへこたれてたらこの恋、実りませんから!!



ハァハァと、少し乱れた呼吸を整えて私は今日も自分史上最高のスマイルで立ち向かう。



「おはようございます、蓮見さん!今日もまた一段とかっこいいですね!」




ニコニコしながら彼を見つめれば、心底うんざりした眼差しで私を射る彼に、今日も今日とて身悶えてしまうのだから


これは「恋」以外の何物でもない。