不破さんは、仕事であってもプライベートであっても、相変わらず奔放で容赦がない。

たとえば、取引先と商談や打ち合わせをしているとき。先方が理不尽なことを言ったりすると、彼のやる気スイッチが入ってしまい、徹底的に論破するのだ。

それが正論であるため、打ちのめされる方がほとんどなのだが、万が一お怒りになられたらどうしようかと、私は毎回ひやひやしている。

精神的にも肉体的にも疲弊するのよ、あの人のお世話は。桐原専務が三日で嫌になったというのが身に染みてわかるわ。


「彼についていくって自分が決めたことだからしょうがないんだけど、すごい振り回されてる感が……」


ボソボソと本音をこぼしていたとき、トレンチコートのポケットに入れていたスマホがピロンと音をたてた。

のっそりとした動きで取り出し、うつ伏せの状態でメッセージをチェックする。


「はぁ、噂をすればゆっきーさん」

「誰それ」


怪訝そうな顔をする桃花に説明するのはあとにして、なんとなく嫌な予感がする不破社長様からのメッセージを読み上げる。