見透かすような視線をこちらに向けられ、ドクンと心臓が波打った。愛想がいいというのは褒め言葉なのだろうけど、素直に喜べる内容ではない。

一線を引いているというのは、その通りだと思う。この人は社長なのだと意識せざるを得ないから、それなりの態度になるのは仕方ないだろう。

彼もそれはわかっているらしく、「まぁ、ビジネスパートナーになってまだ日が浅いから、壁があって当然か」と言った。

でも、もしも彼が私とのことを覚えてくれていたら、きっとまた違ったはず。仕事中はともかく、今のような状況ならもっと親しくなれていたかもしれない。

ただ、“お堅いし隙がない”というのは、可愛いげがないと言われているのと同じような気がする。これは元々の性格だし、どうしようもない……。

なんだか少し切なくなって目を伏せた直後、頭に心地いい重みとぬくもりを感じた。

彼の手が乗せられたのだと認識すると同時に、それはピーターを撫でたときと同じ優しい手つきで髪を滑る。

再び目線を上げれば、前髪がわずかにかかる漆黒の瞳が、私だけをまっすぐ捉えていてドキリとする。