俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい

「もうひとつアリサに頼みたいのは、こいつの世話。つっても、エサは朝晩二回で散歩もしなくていいから、ケージやトイレの掃除をしてもらえると助かる」

「いいですよ」


うさぎから目を離さず、迷わずに答えると、不破さんは少々面食らったような調子で言う。


「これは即答かよ」

「小動物好きなので。この子、名前はなんですか?」

「ピーター」

「それ、絶対あの有名なラビットからとってますよね」


つっこまずにはいられなかった。確かに見た目はそっくりだけど、安直な名づけ方だな。さすがのネーミングセンス。

失笑しつつ、「触ってもいいですか?」と尋ね、了承を得てからケージを開けさせてもらった。

私が緩みきった表情で、もふもふの柔らかな身体に手を伸ばしている最中、不破さんは腕組みをして小さなため息を漏らす。


「飼い始めて二ヶ月くらい経つんだが、全然懐かないから、一度中を掃除しようとして外に出したら大変だったんだ。ずっと逃げ回ってて捕まえられなくて……っておい」


なぜかギョッとしたような声が聞こえ、立っている彼を振り仰ぐと、私の片手に両前足を乗せて静かに撫でられているピーターを凝視している。