営業職で本社に入社した結果……休日出勤、サービス残業、その手当がきっちりつかないのも当たり前。

プロバイドフーズは世に言うブラック企業なのだと、働き始めて半年ほどで確信した。

しかし、会社をブラックにした役職者の方々に不満はあれど、周りの社員は皆人が良く、関係も良好だったりする。

なんだかんだで人間関係が一番大事だ、と両親が言っていたように、いくらホワイトでも人付き合いがうまくできなければ結局辛くなるだろう。

それに、まだ入社一年目だ。根を上げるには早い、もう少し頑張ってみよう。……という負けず嫌いな性格もあって、辞めるまでには至らない。


こんな私の支えになってくれているのが、大学時代から付き合っている颯太。

同い年で二十三歳の颯太は、いたって健全な製薬会社で働いている。給料もそれなりだし、休日ももちろんカレンダー通り。

同じテニスサークルに所属していた彼は爽やか系のイケメンで、優しい性格ゆえにちょっと優柔不断なところがあるけれど、誰にでも好かれる好青年だ。

私が仕事でデートの予定をドタキャンしても、彼は決して怒ったりはしない。理解があって、一緒にいると心が安らぐ存在である。