なるほど……。専務が言っていた通り、社長の考えややり方は、独特だけど的を得ていて勉強になるな。

私は尊敬の眼差しを向けながら言う。


「では、これからメールで送れる資料は、会議前に皆で共有できるようにします」

「ん、よろしく」


ひとつ頷いた彼は、資料を置いた自分のデスクに浅く腰かけて腕を組み、なぜか私をじっと見つめてくる。


「アリサは本当にデキる子だから、そろそろ特別報酬の話をしようか」

「特別報酬?」

「俺の頼みを聞いてくれたら、その分給料に反映させてあげるってこと」


唐突にされたその話に、私はキョトンとして社長と視線を合わせる。

なんとなく彼の含みのある表情が気になるも、とりあえず「ご用件は?」と内容を聞いてみた。

前髪がかかる真剣さを感じる瞳に、どことなく妖しげな色が混ざり、口角がわずかに上がる。


「今夜、一緒に来てほしい。俺の部屋に」


──はっ!?

投げかけられたのは耳を疑うような言葉で、私は目と口をぱかっと開いて唖然とする。

“今夜”、“俺の部屋”で……一体なにをするっていうんですか!?