＊　＊　＊


日曜日の昼下がり、東京の街中は休日を楽しむ人々で賑わっている。

一方の私は、休日らしさのないレディーススーツの上にコートを羽織り、クリスマスムードが漂う通りを全速力で駆け抜けていた。

待ち合わせの時間はとうに一時間も過ぎている。本来なら私も休みだったはずなのに、急きょ新規レストランのオープンに立ち会わなければいけなくなり、予定が狂ってしまったのだ。

颯太（そうた）、ごめん！　今日は私がおごるから！

待ちぼうけを食わせてしまっている優しい彼氏に心の中で謝り、馴染みのカフェへと急ぐ。

罪悪感と共に、こんなことは日常茶飯事で、慣れ始めてしまっている自分にやりきれなさも感じながら。


大学卒業後、私は都内を中心にホテルや旅館などのレストランの業務委託を行っている、“プロバイドフーズ”という中小企業に就職した。

レストランに調理師やスタッフを派遣し、その店舗の運営を請け負う会社だ。

世間的には優良企業だと思われていることだろう。私も会社説明会でのアピールが魅力的で、ここを受けようと決めたのだから。