「で、ひとっことも喋ってないこいつが、経理部長の上杉武蔵(うえすぎむさし)。名前通り武士みたいなやつだから、皆そのまま武蔵って呼んでる」
「気心知れた相手以外には本当に無口なんだけど、お金の管理は完璧にこなす、数字の鬼なんだよ。人事部でもかなり頼りにしてるから、今もついてきてもらってたの」
エイミーの補足にも、私はふむふむと頷く。武将チックなフルネームを聞いてちょっと笑いが込み上げてしまったけど、きっととても頭のいい人なんだ。
私は、長身の不破社長よりもさらに少し背の高い彼に向き直り、笑顔で挨拶する。
「よろしくお願いします、武蔵さん」
ピクリと反応した彼は、無言で頭を下げた。本当にしゃべらない彼に、社長が見兼ねた様子で促す。
「武蔵、俺が教えただろ? 初対面の相手の心を掴む自己紹介」
そう言われ、武蔵さんは少々ためらいながらも、ようやく口を開く。
「……上杉武蔵、三十五歳。好きな言葉は“無言清掃”。よろしくお願いします」
初めて発したテノールの声で自己紹介され、私はエイミーと共に吹き出してしまった。
「気心知れた相手以外には本当に無口なんだけど、お金の管理は完璧にこなす、数字の鬼なんだよ。人事部でもかなり頼りにしてるから、今もついてきてもらってたの」
エイミーの補足にも、私はふむふむと頷く。武将チックなフルネームを聞いてちょっと笑いが込み上げてしまったけど、きっととても頭のいい人なんだ。
私は、長身の不破社長よりもさらに少し背の高い彼に向き直り、笑顔で挨拶する。
「よろしくお願いします、武蔵さん」
ピクリと反応した彼は、無言で頭を下げた。本当にしゃべらない彼に、社長が見兼ねた様子で促す。
「武蔵、俺が教えただろ? 初対面の相手の心を掴む自己紹介」
そう言われ、武蔵さんは少々ためらいながらも、ようやく口を開く。
「……上杉武蔵、三十五歳。好きな言葉は“無言清掃”。よろしくお願いします」
初めて発したテノールの声で自己紹介され、私はエイミーと共に吹き出してしまった。



