お世辞だとか、口先だけだとはなぜか思わない彼の言葉に、気持ちのぐらつきが治まってくるのを感じていると、切れ長の瞳にしっかりと視線が絡められる。


「少しでもやってみたい気があるなら、迷わず飛び込んでこい。俺が受け止めてやる」


──トドメのひとことで、私はあっさりと口説き落とされた。

ドキン、ドキンと、鼓動の音が大きくなる。不安よりも、ワクワクした気持ちが上回る。

この人ならきっと私の未来をよりよくしてくれるって、信じてみたい。


「……これまで、どれだけ頑張っても仕事で評価されたことはありませんでしたし、私自身が必要とされていると感じたのは初めてです。こんなに嬉しいものなんですね」


手元のカクテルグラスに一度視線を落とし、口元を緩めた。決意を固め、明るい表情で顔を上げる。


「挑戦、してみたいです」


力強く宣言すると、社長の綺麗な顔にも満足げな笑みが広がった。

その直後、彼はなにかを思い出したように目線を宙に泳がせる。


「桐原は、俺の世話するの三日で嫌になったって言ってたっけ。聞いたところ有咲は四年あそこに勤めてたみたいだし、忍耐力ありそうだから大丈夫だよな?」

「えっ」