雪成さんはほんの少しだけ照れ臭そうにはにかみ、私の左手を取って薬指にリングを通す。


「俺はお前と一緒に生きていきたいっていう意思表示。麗が生まれた大切な日に、ちゃんとした場所でしておこうと決めてた。もう二度と不安にさせないように」


その言葉がじんわりと胸の奥に染み込んで、瞳には温かな涙がみるみる溜まっていく。

リングは薬指にぴたりと嵌まり、潤んだ視線を上げれば、彼が凛々しい表情で私を見つめているのがかろうじてわかった。


「愛してる。秘書としてだけじゃなく妻として、四六時中そばにいてくれ」


彼の唇が最高に幸せな言葉を紡ぎ、私の瞳の淵からひと粒、またひと粒と雫がこぼれた。

まさかプロポーズされるなんて。嬉しいに違いないのに、想像もしなかった展開に動揺して、つい可愛くない反応をしてしまう。


「結婚……一生できないかもって、言ってたのに」

「そうだよ。麗とじゃなければ一生無理」


ゆるりと口角を上げる彼のひとことに、心臓がトクンと揺れた。

あぁ、そういうことだったんだ。忘年会のときは、私と離れる決意をしていたから……。