「アリサ、今の用件は後回しにしてとりあえず昼飯。……なに皆、白けた顔してんの」


三人が“いまだにこき使われて可哀想に……”みたいな、憐れみの目で私を見ているのがわかる。

それをごまかすためにも、私は「なんでもありません!」と言って急いで荷物を持ち、ぽかんとしている雪成さんに駆け寄った。


パーフェクト・マネジメントが委託しているレストランの抜き打ちチェックは、今でも週三日は行っている。私もほぼすべての委託先に足を運ぶことができた。

しかし、今日連れられてきたのは、初めて訪れる場所。

ヨーロッパのお城を彷彿とさせる三角錐の塔がそびえ、綺麗に手入れされた庭園に囲まれたここは、どう見ても結婚式場だ。確か、平日はランチをいただくことができるという……。

もしかして、式場の厨房にも人材を派遣するつもりなのだろうか。


「あの、ここ、私たちの会社が委託しているところじゃないですよね。これから交渉する、とか?」


キョロキョロしつつ問いかけると、駐車場に車を停める雪成さんは、意味深な笑みを浮かべて答える。


「交渉ならもうしてある。少し中を見せてくれって」

「そうなんですか」