「TUKIMIのレストランの改装工事の件だけど、古い厨房機器を新しくするから業者から見積取っておいてくれる? 工事は今月末からの予定で各部署に連絡よろしく。あ、ついでにお前の元上司に、『顧客満足度八十パーセントで満足してないで改善点を洗い出せ。寝ぼけてんのか』って伝えといて」

「承知しました」


最後のひとこと以外は仰せのままにしよう、と心に留めて軽く頭を下げた。

不敵な社長様は、つらつらと用件を伝えて再びミーティングルームをあとにする。今言われたことを忘れないうちにメモしていると、静観していた武蔵さんが口を開く。


「……アリサさんを見ていたら好きな四字熟語がひとつ増えました」

「わかった。“社畜女子”でしょ」

「“社長夫人”より似合っている気がしますね」


エイミーと桐原さんも口々に続き、三人で笑い合っている。

もう、言いたい放題なんだから! 私は別に、社長様の要求に対してノーと言えないわけじゃなくて、できるからやっているまでなんですよ。

反論したくなっているところへ、なにか言い忘れたのか雪成さんが戻ってきて皆が押し黙る。