二時間ほど新幹線に揺られ、降り立った地は山も建物の屋根も白く染まっていて、その風景も空気も懐かしいものだった。
東京に比べると断然人が少ない駅を出ると、ロータリーに停まっていた一台の白い軽自動車から、ひとりの女性が姿を現した。
ひと目見た瞬間、自分が学生に戻った感覚に陥る。
「麗!」
こちらに駆け寄る母に懐かしい声で名前を呼ばれ、感動と呼んでいいのかわからないが、とにかく熱いものが込み上げてくる。
数年ぶりに会う母はシワが増えているものの、綺麗に年を取っているなという印象で、前より雰囲気が柔らかくなった気がした。
照れ臭さと気まずさを感じながらも、きちんと目を見合わせて挨拶する。
「……ただいま」
「おかえり」
眉を下げる母は、泣きそうな顔をしながらも目一杯の笑顔を見せて、言葉を噛みしめるように返してくれた。
母子ふたりで暮らしていたアパートに久しぶりに帰ると、私の部屋はほぼそのままの状態になっていて、タイムスリップしたような感覚を抱いた。
母はたくさんの料理を用意しておいてくれて、それをつまみながら近況を話したり、大晦日の特番を見たりと、長年会っていなかったのが嘘みたいに心地よく過ごしている。これが“家族”というものなのかな。



