涼しげな顔で怖いことを言う彼に、思わず苦笑した。久々に毒を吐く不敵な社長様が見られて、正直ちょっとホッとする。

よかった、普通に話せそうだ。


「雪成さんは、年末年始はなにをされるんですか?」

「仕事かな」

「うわ……」

「あからさまに嫌そうな顔するなよ」


淡々としたやり取りすらも楽しく、徐々に普段の調子を取り戻していく。

思いきって、デートの約束を取りつけてみようか。彼にちゃんと想われていると安心できる、確かな証拠が欲しい。


「私、二日の夜にはこっちに戻るつもりなんです。だから、もしよければ三日に──」

「麗」


“初詣にでも行きませんか?”という誘い文句を、どこか重苦しい声色で遮られた。直感的に嫌な予感がして、笑顔が固まる。

……あれ、なんかこれ、デジャヴュってやつ? 確か、ずっと前にも似たようなシチュエーションになったことがあるよね。

あれは、そう、颯太に別れを切り出されたとき。まさか……。


「これからは、プライベートで会うのはやめよう」


──予感的中。前方をぼんやり見つめたままの雪成さんから、聞きたくはなかった言葉が告げられてしまった。

スイッチが切られたみたいに思考が停止しそうになるも、なんとか唇を動かす。