こんな締まりのない顔をしていたら、また気持ちがダダ漏れになっているかもしれない。少々恥ずかしくなり、そそくさと降りることにする。


「じゃあ、また月曜日に」

「麗」


ドアに手をかけると同時に、まだ慣れない名前呼びにドキリとして振り向く。その瞬間、彼の右手に頭を引き寄せられ、唇が触れ合った。

突然のキスに驚き、瞬きすらできなかった。触れるだけで唇は離され、じわじわと甘さを感じながら彼を見つめる。

どこか憂いを帯びていて、なにか言いたげな神妙な表情。それがあたかも別れを惜しんでいるように思えて、胸がきゅうっと締めつけられた。

さっきも今も、どうしてキスをしたのかはっきり理由を聞けないのは、きっとこうやって自分に都合のいい解釈をしていたいからだ。私はなんてズルい女なんだろう。

切なさともどかしさを入り混じらせていると、不破さんは私の頭をくしゃくしゃと撫で、口角を上げる。


「友達とわだかまりなくしてこいよ。おやすみ」

「はい……おやすみなさい」


やっぱり、キスについては触れないのか……この人もズルい男だ。でも、そんな彼にハマってしまったのだから仕方ない。