俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい

不破さんってば、私のことを気にかける素振りなんか、会社ではまったく見せなかったのに。なんで、いつも助けてくれるの……。


「誰かのために料理作るなんて、すげぇ久しぶりだよ。どうぞ、座って」


彼が椅子を引いて促してくれるものの、私の足は力が抜けたみたいに動かない。俯き、今にも泣きそうな私に、少し心配そうな声が届く。


「アリサ?」

「……不安、なんです。一番大事な親友との仲がこじれたらどうしようって」


白いフローリングに視線を落としたまま、ぽつりと本音をこぼした。

私の事情を知っているのが不破さんしかいないせいか、はたまた私の心が彼に寄りかかりたがっているのか、抱え込んでいた思いが次々と溢れる。


「あの子はきっと、ずっと言えなくて悩んでたはずなんです。私はそれに気づいてあげることができなかった。だから、せめてちゃんと彼女の話を聞くべきなのに、自分のことしか考えず逃げてしまって……。逃げたって、飛び込めるのは仕事しかないのに」


一番近くにいたのに彼女のことを理解できていなかった自分にも、自己中で憶病な自分にも失望して、涙がひと粒頬を伝った。